旅行地や観光地などに行った際、みなさんはどこに行くだろうか。有名な観光地やご当地の食事を食べにレストランに行くのも良い。だが私は、まずGoogleマップで「スーパーマーケット」を探すことが多い。せっかく旅行をしているのになぜスーパーを探すのか。この記事では、これまで日本一周・縦断を何度も実施し、年100日旅行する「まち歩き東大生」が、各地で出会った事例を元に日本の観光・旅行を見つめ直していく。
九州のスーパーで見かける鳥刺し
大分や宮崎、鹿児島などにあるスーパーマーケットにいった際には、ぜひ「お肉コーナー」を訪れて見てほしい。九州地方のスーパーにはかなりの確率で、お肉売り場にお刺身ゾーンが存在するのだ。九州では生の鶏肉を食べる文化が根付いており、スーパーで鳥刺しを購入することができる。地域によっては鶏のたたきという名前で売られていることもある。鳥刺しには九州の甘い醤油がついており、鳥刺しのネットリした食感と非常によくあうのである。しかもスーパーでは1パック300円くらいで購入することができ、お店で食べることを考えると、非常にコスパも良い。私は関西にいた時、何度かフェリーさんふらわあで九州に行ったが、その度に鳥刺しを買ってフェリーで食べるのが旅の楽しみの一つであった。

高知県で見かけた田舎寿司
高知県では昔からこんにゃくの寿司が食べられているそうだ。いなり寿司のあげの部分がこんにゃくになっているような形のものが多いが、これもなかなか他では見ない商品である。こんにゃくの寿司のみならず、椎茸の寿司、茗荷の寿司など、独特な寿司の盛り合わせである。私はスーパーの惣菜コーナーでこの商品を偶然見つけ、買ってみることにした。私がこんにゃく好きであるということもあるが、非常に気に入ってしまった。同じスーパーでは、名物の「おやつ芋」(さつま芋の天ぷら)も購入した。

北海道のセイコーマートで見かける飲み物
北海道のコンビニも特殊なものを見かけやすい。一つは「ソフトカツゲン」だ。乳酸菌飲料みたいなものであるが、北海道でしか買うことができない。「勝つ源」という意味でカツゲンらしく、スポーツをやっている人にも評判が良いそうだ。
他にも「ガラナ」など、本州で見慣れない商品を見つけることができる。あとセイコーマートは北海道産の牛乳を使ったアイスクリームもおすすめだ。

大阪で売ってる紅生姜の天ぷら
最近はみる機会が減っているような気もするが、大阪名物の紅生姜天ぷらを手にいれることができるスーパーもある。揚げ物コーナーで赤い物体があればおそらくそれである。私は紅生姜の天ぷらは好物であるが、苦手な人も多いらしい。まずいと感じるから悪いというわけではなく、口に合わない食べ物があるということを知れる機会を得られたという喜びをまずは感じてみていただきたい。

八戸のイカだけの寿司セット
青森県八戸市はイカの水揚げが多いことで知られる。この町のスーパーで見かけたのがイカの寿司セットである。10カン入りで、全てイカなのだ。炙ってみたり、甘だれをかけてみたりなど、さまざまな種類のイカ寿司が入っている。地元のお店で食べるのも良いが、スーパーであれば気軽に味見することができるのが魅力だ。

スーパー巡りが観光であると言える理由
このように、私は旅行にいった際、ほぼ確実にスーパーマーケットを訪問している。そしてスーパーを見渡して、自分が住んでいるまちでは見かけないような商品がないか、探してみるのである。ある意味で宝探しのような感覚であると言える。そして、しっかり探せばほぼ確実に、そのまち独自の商品が見つかるのである。上で述べたような明らかに見た目が違う商品もあれば、「この唐揚げには徳島県名産の阿波尾鶏を使用しています」といったようによく見なければ気づかないようなものもある。また海沿いの町であれば、その土地でとれた海産物を加工した新鮮な惣菜も売っていたりする。三陸の宮古で食べたたこ煮は非常に美味しかった。

意外とスーパーには「そのまちにしかないもの」が隠れているのだ。その意味でスーパーは観光地であると言える。「光を観る」と書いて観光であるが、見えない光を探すことも観光ではないだろうか。
スーパーで買うことの意味
様々な観光地に行けば、郷土料理やその土地でしか食べられない食べ物を提供している飲食店が多い。しかし、有名な観光地になればなるほど、その価格はどんどん高くなっていく。函館の朝市だと一杯3000円くらいする海鮮丼もザラである。一方、スーパーへ行けば同じような地物の海鮮丼が500円くらいで売っている。魚も、場合によってはスーパーのものの方が良質かもしれない。というのも海沿いのまちで美味しくない海鮮を売っているスーパーがあれば、おそらく潰れてしまうのである。海鮮の味に厳しいまちのスーパーの海鮮は、その原理から考えて、ほぼ確実に美味しいのだ。逆に住民が行かないような観光地の海鮮屋の方が、その品質に疑問符がついてもおかしくない。もちろん観光地でも美味しい店はたくさんあるのだが。ひとまず、スーパーに行けば旅行の際の食費が大幅に浮く、ということである。

また、スーパー巡りをすると、新しい名産や名物を発見することがある。「これはうちの街にはないぞ」というものが見つかれば、新たな学びになると同時に、観光客としての使命を果たすことにもつながる。というのも、その土地に住んでいる人は自分のまちの何が珍しいのか、どのようなものが珍しいのかをあまり意識しないのである。あるものが日常に存在するまちの人にとって、特別なものであるとは認識しづらい。私も地域活性化のプロジェクトに関わったりしているが、人と話していると、我々が想像していなかったことに「魅力」を感じる人は意外と多いのである。潜在的に魅力があるものを「よそもの」たる観光客の側が発見することは、その町の価値を発見するにおいて重要な動きなのである。また自分の住む町との違いを知ることは、自分のすむまちを知ることにもつながるのだ。
そして、地元の人たちの生活に入り込むという意味で旅行はさらに魅力的なものになる。スーパーという日常に結びついた場所を訪れることで、まちへの没入感はより一層高まることだろう。
観光地としてのスーパー
私は日本中のかなり多くの町を訪れているが、まちによってはこれといった観光地がない地域も少なからず存在する。ほとんど観光客などいないようなまちも少なくはない。しかし、私はスーパー巡りも観光だと思っているため、とりあえず行ってみるのである。スーパーが全くないまちは極めて少ない。だから、日本全国が観光地となるのだ。どこの地域に行ってもある程度楽しめるし、地方のスーパーの独特な雰囲気や言葉、BGMを聞いて楽しむこともできる。そして地方のスーパーでお金を使うことは、そのまちの経済を多少なりとも活性化させることにつながる。
だからこそ、ぜひ観光ルートの中にスーパーマーケットを入れてみていただきたい。ちょっと違った旅行ができるはずだ。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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