大阪・関西万博は、なぜ入場料が高い後半に客が増えたのか 需要関数から考える

旅行を考える

大阪関西万博が10月13日に閉幕する。改めて見ると、最後の方の来場者数の伸びは凄まじく、ミャクミャクのグッズは関東圏においても見かける機会が多くなってきた。しかし、よく考えてみると、この現象は「価格が上がれば需要が減少する」という一般的な経済の理論を満たしていないように見える。今回はこの現象を日本を3周した東大生経済学部生が簡単に分析してみる。

大阪関西万博のチケットの値段について

大阪・関西万博においてはチケットの値段に傾斜が付けられていた。開幕日から4/26まで入場できる開幕券は4000円で販売されており、7/18まで使用できるチケットは5000円で、その後は平日6000円、土日祝7500円で販売されていた。事実上、後半になるに連れて価格がどんどん上がっていく仕組みだ

経済学の教科書的に考えれば、価格が上がれば需要が下がるはずだ。しかし、開幕券があった4/13〜4/26の14日間の来場者数は1,379,656人であったのに対し、前期券があった6/29〜7/12の14日間の来場者数は1,832,690人、終盤の9/21〜10/4の14日間の来場者数は3,385,027人であった。価格が上がるに連れて、来場者数が上がっていると言えるだろう。グラフに示すと以下の通り。

経済学の理論における考察

一般的な需要の法則

基礎的な経済学においてはご存知の通り、通常は価格が上がれば需要は減少する。これを需要の法則などと呼んだりする。夕方にスーパーにいくと売れ残ったお惣菜に値引きシールが貼られていることがあるが、それも価格を下げて需要を増加させるという、この一般的な理論から来ていると考えられる。

ギッフェン財

一方、経済学においては価格が上がるほど需要が増加するという事例を説明する理論もいくつか存在する。その一つが「ギッフェン財」と呼ばれるものだ。このギッフェン財は主に食料品などの生活必需品でかつ劣等材と言われる安い財を指す。物価が上がるとそれまで買っていた「肉」や「魚」などの高いものを買えなくなり、生存のために安い小麦やイモ、米などを買う人が増えることがあると言われるのだ。だが万博のチケットは生活必需品ではなく、劣等材とも言い難い。ギッフェン財は万博のチケットを考えるのには適さないだろう。

ウェブレン財

他にウェブレン財と呼ばれるものもある。ブランド品のような富裕層が買うものは、値段が上がれば上がるほど、そのステータスや魅力が上がると感じられることがあり、そのような場合に需要が増加することがある。しかしこちらも万博について考えてみると「価格が高くなったから行きたい」と考えた人はほとんどいないと考えられるため、万博のチケットはウェブレン財とも言えないだろう。

より単純に考えてみよう

ではなぜ終盤にかけて万博の来場者が増えたのだろうか。おそらく我々の直感としてあるのは、SNSやメディア等において良い評判が広がったことにより潜在需要が生まれたというものであろう。他にも「期間限定である」という非再生産財の特徴から、今しか見れないと感じ、後悔することのコストがチケット価格を上回ったと考えることもできる。また、チケット価格自体、終盤になるとずっと固定されていたため、安く買えなかった後悔をほとんど感じていない可能性もある。他に、開幕前から中盤にかけてメディアやSNS等で大規模にネガキャンが行われていたことも、後半に来場者が集中した原因と言えそうだ。

おそらく、通常の経済学通り万博においても「価格が上がれば需要が減少する」という需要曲線は描けたであろう。しかし、万博の限定性や社会の反応といった外部要因によって、この需要曲線自体が右シフトした結果であると結論づけられそうだ

以下の図ではオレンジ色の線がシフト前、赤色の線がシフト後の需要曲線である。同じ価格に対する黒点表される需要の位置は上昇した。

まとめ

大阪・関西万博の来場者数が終盤にかけて増加した原因を経済学の視点から考えてみた。私は開幕券の時に万博にいったので、チケットは安かった上に、ガラガラでほぼ並ばずにパビリオンに入れるイメージしかない。だが終盤はどこも大混雑のようだ。

最終的には想定来場者数の2800万人(関係者除く)は上回らなかったようだが、最終盤は想定以上に盛り上がっているようで、大成功と言えるのではないだろうか。私は関西出身であり、万博の整備が始まる前に一度夢洲にいったことがある。その時は今のように大きな集客力で関西経済を牽引する地域になるとは思いもしなかった。今後IR(統合型リゾート)や大きな公園も整備されるようで、開発が楽しみである。

最後までご覧いただきありがとうございました。私はまだ学部生であり、経済学の専門家ではないので間違いがあればぜひ教えていただきたく思います。

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