日本各地にはさまざまな温泉地があり、温泉旅行へ出かける国民も多い。温泉旅行でみなさんはどのような楽しみ方をするだろうか。比較的一般的な楽しみ方の一つが、旅館で泊まって旅館の温泉に入るというものだろう。しかし、温泉地は日帰りでも楽しむことができる上、旅館ではない公衆浴場ならではの魅力がある。今回は日本一周を3回やった東大生が、温泉地における公衆浴場・共同浴場の魅力を紹介する。
温泉地には共同浴場がある!
みなさんは温泉地と言われてどこを思い浮かべるだろうか。草津温泉、城崎温泉、道後温泉…など、日本には3000箇所の温泉地があると言われている。日本を3周してもなお、まだ入浴できていない温泉はたくさんあるのだ。
そのような温泉地においては、旅行客は温泉に入ることができる。そして、多くの温泉地においては「公衆浴場」というものがある。宿泊客の利用を想定している旅館の温泉の他に、公営等で運営されているような共同浴場があるのだ。都市部の共同浴場だと、水道水を使っていることが多いが、温泉地であれば贅沢に温泉が使用されがちだ。

共同浴場の特徴
私は全国の公衆浴場を訪れているが、総じて地元の方々の利用が多いと思われる。付近に住む方が日常的に利用しており、銭湯のような役割を担う。特に平日などはその傾向が強い。そして、地元向けの色が強いことから、大抵の場合に入浴料金が他の施設に比べて安い。その分、サービス自体は最低限で、シャンプーが設置されていなかったりする。施設の老朽化を感じることも多い。いい意味でレトロとも言えるだろう。
また、湯の温度が異常に高いことがしばしばある。温度計のメーターが平気で45度とかなのだ。「熱いのが好きな人もいるので、水を足さないでください!」といった表示があるので、頑張って熱いまま入る。
| 特徴 | 旅館の日帰り入浴 | 共同浴場 |
| 料金 | 1,000円〜2,000円程度 | 100円〜500円程度 |
| アメニティ | 充実(タオル・化粧水等) | 基本なし(持参必須) |
| 雰囲気 | 非日常・リラックス | 日常・ローカル交流 |
| 主な利用者 | 観光客 | 地元住民 |
共同浴場は交流の場所
そのような公衆浴場へ行くと、地元の方にお会いすることが多い。なんとなく入っていると、相手から「どこから来たのか」と聞かれることがある。そこから話がはずむと、その温泉の歴史や生活との関わりなどが見えてくる。共同浴場は地元の皆で支えるといった空気感があり、マナーを守ることはもちろん、フィルター交換などを常連の客が入浴ついでにやっているという事例もあった。さまざまなストーリーを聞くことができ、旅をしている気分になれるのが共同浴場の良いところである。

おすすめの共同浴場
ここからは日本一周を3回やっている立場から、おすすめの公衆浴場を3つ紹介する
1, 公衆浴場 石和温泉(山梨県石和温泉)
山梨県の石和温泉にある公衆浴場である。いかにもな食堂が併設された温泉で、地元の新聞などでも取り上げられているそうだ。3つの浴槽が並んでおり、アルカリ性の温泉である。42度くらいで少し熱いのだが、隣に併設されている水風呂と往復する「温冷交代浴」をすれば心地よく入浴できる。地元の方に教えていただいた。そしてこの温泉の特徴は何より、この水風呂である。熱い風呂のみならず、冷たい水風呂も温泉水が使用されているのだ。温冷交代浴の両方のフェーズで温泉を被ることができ、その効果も抜群だ。
なお、シャワーももれなく温泉とのこと。もともとは浴槽も含めて地下水を沸かしていたそうだが、62年に温泉が沸いたことをきっかけに全て温泉水に切り替えたそうだ。

2, 新津温泉(新潟県新潟市秋葉区)
鉄道のまちとして知られる新津にある、新津温泉もなかなか特殊な温泉だ。この温泉は常にガソリンの匂いがする。それもそのはず、元々は油田として掘削された場所であり、石油分が温泉に含まれているのだ。そのおかげでずいぶんツルツルとしている。20年ほど通っておられるという方に話を伺うと、昔は浴槽に黒い石油が浮いていたそうだ。今はそこまでではないが、油のカスがところどころで浮いている。
この新津温泉は広い待合室も名物である。湯治に訪れる人は、大広間で休みながら、何度も入浴するらしい。

3, 竹瓦温泉(大分県別府)
大分県の別府温泉にある竹瓦温泉も素晴らしい温泉である。別府の温泉は駅から離れていることが多いのだが、この竹瓦温泉は比較的駅からのアクセスも良い。一階から開削したような作りとなっており、脱衣所から浴槽を見下げるのが少し特殊だ。この温泉はとにかく熱い。しかも浴槽は一つしかない。受付のおじさんが「めちゃくちゃ熱いから気をつけて」と声をかけてくるほどだ。だが熱い温泉ほど湯上がりの感覚は素晴らしい。公衆浴場ばかり巡っていると、45度くらいの温泉でもなんとか入れるようになってきた。(逆に40度くらいの温泉はぬるいと感じるようになってしまった)
ちなみにこの竹瓦温泉は「砂湯」も有名だ。温泉で温められた砂の中に入るのだが、こちらはどちらかというと観光客向けだ。

手ぶらでは厳しい?共同浴場に行く時の持ち物
多くの共同浴場には、シャンプーや石鹸、タオルが備え付けられていない(番台で購入できる場合もある)。そのため、以下の「お風呂セット」を持参するのがおすすめだ。
1, タオル・バスタオル(貸出がない場所がほとんど)
2, 石鹸・シャンプー・リンス(備え付けがない場合が多い)
3, 小銭(100円玉)(ロッカー代や入浴料用。お釣りが出ない券売機や、箱にお金を入れるだけの場所もある)
4, 洗面器(場所によってはマイ洗面器が必要なこともあるが、基本は借りられる)
共同浴場の「暗黙のルール」とマナー
地元の生活の場にお邪魔する共同浴場では、スーパー銭湯とは違うマナーが存在する。トラブルを避け、気持ちよく利用するためのポイントは、私が思いつく限り以下に記載してみた。
1, 「こんにちは」「こんばんは」の挨拶
公衆浴場にいくと、相手から挨拶をされることや、声をかけられることも多々ある。そのような時は、快く挨拶を返すのがおすすめだ。相手からの第一印象がよければ、そこから先もいろいろ貴重な話を聞ける可能性が増える上、お互いにとって良い思い出になるのだ。
2, かけ湯は念入りに
体を洗ってから、またはしっかりかけ湯をしてから入るのが鉄則だ。大きなスーパー銭湯などでは掛け湯コーナーがあったりするが、共同浴場だとその設備がないことがあるので、忘れないように要注意である。
3, 湯船のふちには座らない
小さな浴槽では、ふちに座ると他の方の邪魔になるだけでなく、お湯が溢れてしまうことがある。くれぐれも他の利用者への配慮が重要だ。
4, 水埋め(加水)は慎重に
上で紹介したが、地元の人は熱いお湯を好むようである。勝手に水を足さず、周りの方に「埋めてもいいですか?」と一言かけるのがマナーだ。
温泉地で共同浴場に行ってみよう!
日本全国には素晴らしい公衆浴場がたくさんあります。ぜひ温泉旅行に行く際は、公衆浴場も探してみましょう。公営の施設だと、プロモーションをあまりしない関係で検索ヒットしにくいことや、ガイドブック等で掲載されていないこともあるようです。「公衆浴場」「共同浴場」などと調べてみるのがおすすめです。公衆浴場も活用し、温泉旅行をもっと楽しみましょう。最後までご覧いただきありがとうございました。


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